今月の天風箴言

真理というものは絶対的で不変であるが
倫理というものは相対的で
従って時代と国情に依って変化し相違するものである

箴言註釈26 現代語表記版

多くいうまでもなく、真理というものは唯一にして無二のものであればこそ当然それは絶対的で、又絶対的であるがゆえに永遠に不変、つまりどんな変化も招くものでないということは、誰もがよく知っているところである。

が・・・・・・多くの人の中には、いわゆる倫理なるものをも、真理と同様に絶対的で、また不変のものであるかのように思っている人が多い。

そして、そういう人に限って、研修科の「意識の分解」という演題の講演の際にも説明した通り、いわゆる倫理といわれるものの中には、

○天理(大自然の摂理)に基づいて作られたものと、
○人間がその時代に生きていくうえでの都合や必要な条件等を基準または理由と
して作られたもの、という二つの区別があるということを理解していない。

だからそれらの人々は、いわゆる倫理というものを、前述したように、絶対不変の無上のもののように尊重し、特に人間の行為に対する善悪の批判を行う場合に、常に倫理といわれるものをその批判決定の唯一の基準とする傾向がある。

がしかし、これは決して妥当な考察態度ではないのである。

というのは、倫理というものが、そのことごとくすべてが天理に基づいて作られたものばかりならばともかくも、事実においては、倫理といわれるもののおおむね多くは、人間のその時代に生きていくうえでの都合や必要な条件等を基準または理由として作られたものである以上、そうした倫理というものは、その表現上の言葉や、形容する文がいかに尊く感じられようと、時代の推移と変遷に伴ってどんどん遠慮なく変化して行くからである。

それは、何も、深く考える必要はない。
たとえば、
「男女七歳にして席を同じうすべからず」
という、かの有名な孔子の訓えのごときは、二千年の昔においては、当時の人々には極めて厳粛に思われた立派な人生倫理であった。

しかし、それが現代の世の人々の人生における常識に容認されるであろうか否かということだけ考えてみても、これらの事情はすぐにわかることであると思う。

また、太平洋戦争が終わるまでは、一般女性の人権を我が日本国では男子と平等にみていなかった。しかも、それが誰にも何ら不合理と思われていなかったというのも、その時代の人生倫理が容認していたからである。

更に、たとえば人を殺傷するということは、現在の世の中では単に法律上ばかりでなく、人生倫理の上からいっても「悪」である。

しかし、治安体制の未発達な古代には、個人個人が、自分の力で自分の生命を防護しなければならなかったため、その時代にはそれが止むを得ないこととして、特に「悪」とは考えられなかった。

又、現在、個人同士の殺傷は「悪」であっても、国と国との戦争ではそれが「悪」でなくして、時によると却って功績にさえなる。

がしかし、これとてもやがて時代の進化に伴って、国と国との戦争においても、人の生命に危害を加えるということが人道上の罪悪だと考えられる倫理が作られるときが、あるいは遠い将来にあり得るだろうとも考えられる。

いずれにしても、こういう事実の上から考えると、倫理といわれるものが概して一時的なもので、不変的でない相対的なものが多いということが納得されると思う。

このような理由から、当然、我々はいかなる場合にも、人生における行為の善悪の批判には、いわゆる倫理という相対的なものを基本とすることなく、常に永遠に不変なる絶対的な真理を基本とすべきである。

しかも、この極めて尊い目的を現実にするには、これまた、研修科やあるいは修練会にて力説している通り、物事の判断を、理性心意一本に依存することなく、人間の心意識の中で最高である霊性心意に一任すべきである。

したがって、この霊性心意に一切の判断を一任する真人生に生きるためには、多くいうまでもなく、入念に、そして完全に、潜在意識領を整理浄化することを真剣に心がけねばならない。

というのは、そうしないと、雑念、妄念、邪念、悪念等が実在意識を占領して、絶えず霊性心意の発動を妨げるからである。

要するに、講習会で精神生命作用の基本機能である「感応性能」の積極化を現実化するために、「観念要素の更改」や、「積極観念の養成法」、あるいは、「神経反射の調節法」を教え、同時にその真剣な実行を力説しているのも、結局その根拠となる理由はこのためである。

それ故に、真人生活の徹底を誓いとする我々は、より一層の熱意をもって、天風哲学の真髄を為すところの統一道の践行に努力されて、常に、霊性心意の発動する極めて尊い至人の境地に到達されることを心より奨める次第である。

『天風哲人箴言註釈』昭和三十八年発行、「箴言二十六」現代語表記・編集部編

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