中村天風財団(天風会)

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今月の天風箴言

日々更新の宇宙真理に順応するのには

先づ自己の心を日々更新せざるべからず

箴言註釈十 現代語表記版

多くいうまでもなく、日々更新、すなわち日々新たにして、日に新たなりという大事実は、崇高にして犯すことのできない絶対的な宇宙真理である。

この現象事実は、要するに、宇宙の本来の姿が「進化と向上」にあるためである。

ところが、この真理と事実とが実在するにもかかわらず、しかも万物の霊長たる人として生まれたものの中に、些かといえども更新を現実化せず、いわゆる十年一日、いつまでたっても昔のままの状態で、すなわち何の進歩も向上も全くせず、大した事もできないまま歳月を過ごし、この貴重な人生を惜しいことに無為に活きている人が相当多くいるのが、現在の人の世の有り様である。

それも、時代が非文化時代ならそうもあろうが、今や文字通り日進月歩の文化時代に、事態がこのようであるというのはそもそもどういう理由かというと、それはこの箴言に記した通り、日々更新の宇宙真理に順応する肝心な用意を欠いているからである。

その用意とは、これも箴言にある通り、自己の心の更新である。

すなわち自己の心が、現実に更新されない限りは、この日々更新という宇宙真理に絶対に順応することが出来ないからである。

分り易くいえば、順応条件が整わなくなるためである。

もっと詳しくいうならば、自己の心を現実に更新することを疎かにすると、人生に一番大切な、精神態度を積極的に保つということが、どうしても思うようにできにくくなる。すると知らず知らずの間に、精神態度が消極化してきて、人間の生命確保に直接的に大きい支障を招く。怒りや、悲しみや、怖れ、あるいは心配や煩悶等々というような、価値のない消極的な感情や情念が絶えず実在意識領に次々と生じてくる。

そしてその当然の結果として、日々更新の宇宙真理にどうしても順応することが不可能となる。

そうなると、人生は惜しいことに向下の一路をたどることとなり、憐れにも万物の霊長が名ばかりのはかない存在となることを余儀なくされる。と言うのは、その一切の結果が進化に逆転することになるからである。

この事は、世間にハッキリ実例として存在している。現に相当立派な理智教養をもっていても、一向に大して出世することもなく、又長い間実際的な業務に忙しく対応して多くの経験をもちながら、各別注目されるような成功もしないで空しく老境に至り、いわゆる「日暮れて道遠し」の感を抱く人が、現在の世の中に相当多い。

これは結局、自己の心の更新という大切なことを、無自覚にも疎かにしていた結果である。

とにかく、こうした厳粛な事実に思い至ると、真理に順応して、その生存と生活とを確保する人生教義を、体得し実行することができる貴重な縁に恵まれた我々天風会員は、ほんとうに幸せだと心から感謝しないではいられない。

というのは、我々会員が統一道の教義の中から修得させられているあの観念要素の更改法や、積極観念の養成法及び神経反射の調節法、更に修練会において行修する真理瞑想行や、安定打坐密法等々の、そのすべてがいずれも、心の更新を完全に現実化する貴重な実際方法であるからである。

そしてそれを真実に立証して余すところのない事実は、教義を真面目に実行する会員はそのすべてが文字通り「日々新たにして、又日に新たなり」の大真理の示す通りの、第一義的な幸福に誠に恵まれて輝く。すなわち、私は「喜びだ 感謝だ 笑いだ 雀躍だ」と、どんな人生に直面しても、常に喜びに満ち満ちた人生に終始しているのが、何よりの立派な証拠である。

しかし・・・天風が切実に念願とするところのものをありのままに言えば、この自覚を正しく心に持ち、心の更新を真剣に志す人が、ますますこの現世にその数を増やすことである。

そうすれば、現代の世に多い自己本位のみにとらわれて、卑しむべき第二義的な欲望に燃える人の数はだんだん減少し、我が天風会のデクラレーションに明記してあるように、純正な真人の正当な意欲である、人の世のためにひたむきに貢献しようと欲する人が当然増えてきて、お互いの住む人の世が、もっともっと美しく尊い、ほんとうの人間の住む理想的な、価値の高い活き良い世界が必ず作られることに決まっていると、断固として信念するからである。

願わくは会員諸君よ! 諸君が、この天風の意のあるところを心にとどめて、より一層の真剣さで、心の更新ということを自ら実践することに精進されて、その尊い現実の模範を世の人々に示されて、修養大悟の真実を具現化されることを、広い意味においての人類幸福のために、心の底より希望する次第です。


昭和三十九年九月「志るべ」七十号所収「新箴言註釈十」現代語表記・編集部編

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