オンライン土曜行修会について伊藤講師にインタビュー
土曜行修会は平成29年5月にリニューアルし、それ以来毎回多くの参加者を迎えてきましたが、新型コロナの影響で残念ながら令和2年2月をもって中断。5カ月後の7月より、装いも新たにオンライン土曜行修会として再開されました。
今回は行修の責任者である伊藤秀樹講師に、そのあたりの事情などをうかがってみました。
――はじめてオンライン行修会をおこなったわけですが、率直な感想をお聞かせください。
伊藤 とても新鮮でしたね。自宅のいつも使っているパソコンの前にいながらにして、多くの人たちとつながれるわけです。アメリカや南米にいる人たちとも、何の違和感もなく接続できることに、あらためてびっくりしました。以前会社でやっていたテレフォンカンファレンス(※電話会議のこと)とは、格段の違いを感じました。
――伊藤講師自身がオンラインという形式にとまどうことなく、すんなりと入り込めたわけですね。
伊藤 いえ、やはりとまどうことはありました。いま自分が喋っている顔がパソコン上に映っていて、それを自分で見ることになるんですが、それが初めての経験で、ちょっと奇妙な感じがしましたね。でも、およそ半年ぶりの行修会だったんですが、常連の皆さんがたくさん参加してくれて、ひさしぶりに皆さんの顔を見ていると、喜びやら安心感やらが湧いてきました。
――オンライン行修会に参加した人たちは、どんな感想をお持ちだったんですか?
伊藤 終わってからアンケートを書いてもらったんですが、「いろいろな意見が聞けてよかった」「説明をじっくり理解しながら聞くことができた」「質問したことに回答してもらい、疑問に思っていたことがよくわかった」といった言葉をもらいました。中には「スケッチブックに描いてくれたので理解しやすかった」というのもありました。
――何ですか、スケッチブックというのは?
伊藤 運動法についてスタッフの一人がスケッチブックに書いて、それを画面に映して説明したんです。
――スタッフの皆さんも、いろいろ工夫されているんですね。何か気になる感想はありませんでしたか?
伊藤 スマホを使っている人が多くて、パソコンやタブレットより画面が小さいわけですから、いろいろ見にくくて大変だったようです。それと、通常の行修会よりもエネルギーを使った、という声もありました。オンラインというのは自宅から参加できるので気楽に見えますが、やってみるとけっこう集中力が必要なようです。私もそれは実感しています。
――中村天風財団では全国あちらこちらでオンライン行修会がおこなわれていますが、土曜行修会ならではの特色はありますか?
伊藤 「各人に合わせて、丁寧に」というのが従来からのモットーなんですが、その目標を実現するために、双方向性の機能を活用しています。具体的に言うと、参加者の皆さんを「ブレイクアウトセッション」という少人数の「部屋」に分けて、それぞれ数名のスタッフを配属して、説明やQ&Aをおこなえるようにしています。
――さきほどのスケッチブックも、その「部屋」でのエピソードなんですね。
伊藤 そうです。
――参加者は最初から最後まで、それぞれの「部屋」に分かれて行修をする、ということですか。
伊藤 いえ、それはちがいます。朝礼とか安定打坐などは全体でやります。状況におうじて参加者は「部屋」に分かれたり、集合したりするわけです。
――行修会というのは実技が中心ですが、オンラインでは実技指導はどのようにおこなっているんですか?
伊藤 従来のように「手取り足取り」で教えられませんし、相手の呼吸の様子とか、顔色の変化といった微妙なことはオンラインではわかりません。だから、やり方の説明とか目的の説明といったことに重点を置くことになります。でも、それはけっして座学ではありません。書籍と合わせて自分で理解を深めることが大切で、私たちはそういった理解の手助けをしているわけです。
――これから参加する人は、事前に何か準備が必要でしょうか。
伊藤 準備することは特にありません。中村天風財団のことを全然知らない人たちにも、気軽な気持ちで参加してほしいですね。もちろん、中村天風に関する本を読んだり、ネットで調べてもらってもかまいません。初心者の人でも、入会10年を越えたベテランでも、それぞれの理解度に合わせて班を編成して、スタッフを配置しますから、安心して参加してほしいですね。
――注意事項のようなものは?
伊藤 対面式の行修会ではスタッフが参加者の健康状態をつねにチェックしていますが、オンラインではそうはいきません。参加者の皆さんにはご自分の体調をセルフチェックしてもらうように、お願いしています。
――継続してオンラインで学ぶ人に、何かアドバイスはありますか。
伊藤 一方通行でこちらが教えるばかりでなく、参加者に質問や意見をどんどん出してもらい、「みんなで研究し合う」という雰囲気でやっていきたいと思っています。だから、受け身ではなく、心身統一法に対する探究心をつねに持っていてほしいと思います。お互いに研究することをやっていけば、全員が理解が深まって、「参加したかいがあった」「やったかいがあった」となると期待しています。
――最後の質問になりますが、オンラインという形の行修会について、どう思われますか。
伊藤 講習会等で知った心身統一法を、生活に取り込み、いかに「行修の日常化」するか、についてお互いに役立てられる場であって欲しいと思います。
――新型コロナが収束しても、オンライン土曜行修会は継続するというお考えですか。
伊藤 通常の行修会が再開できても、オンラインの利点を活かす方法は探っていきたいと思っています。行修会にかぎらず、 中村天風財団のさまざまな行事が、これからオンライン化していくでしょうね。これは時代の必然的な流れだと考えています。
――ありがとうございました。
次回は運営にたずさわるスタッフの皆さんに、お話をたずねたいと思います。
お楽しみに。
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