今月の天風箴言

清濁(せいだく)を併(あわ)せ吞むという事の出来得ない人は
広い世界を狭く活き
調和ある人生を知らず識らず不調和に陥れる人である

箴言註釈16 現代語表記版


二千年の昔、中国の儒聖(じゅせい)の言葉に「およそ安楽の要訣(ようけつ)は、須(すべか)らく人の一善を見て、其(その)百非を忘れるに如(し)くはなし(註・安楽に生きる秘訣は、一つでも人の良い所を見つけ、百の欠点を忘れるようにすることである)」というのがある。

また、西洋の哲学者の言にも「出来るだけ人のすることを褒めることに努め、みだりに人を批判しないように心がけ、万一、人の失策を見出したら、それを許すと同時に忘れるようにしよう。そうすることで、汝(なんじ)の人生の最も幸福な日が楽しめる」というのがある。=How to enjoy the happiest day of life, praise people for what they do, not criticize them for what they doing, and if we find fault, let us forgive it and forget.

これは、いずれも人生を完全に生きるには、要するに、恒に清濁を併せ呑むにありということを教えている尊い言葉である。
事実において清濁(せいだく)を併(あわ)せ呑まない心でこの混沌たる人生に生きると、自分の生きる人生の幅が極めて狭いものになる。

そして、その上に、事あるごとに不調和を感ずる場合が多くなって、結局は人生を知らずしらずのうちに、不幸福なものにしてしまう。

というのは、多くいうまでもなく、人の顔が各々それぞれ異なるように、その心も又異なる人々の中で生きて行く時、滅多に自分の気持ちにピッタリと合致する人が、そうやたらといるはずがないからである。

ところが、世の人の多くは、他人の言行の批判にばかり熱心で、自分の気持ちにマッチしないものとは容易に融合しようとしないで、反対に排斥(はいせき)する。

そして、そういう人に限って、他から批判される欠点の多い人であり、しかもそれをそうと自分自身で気づいていない。

そもそも、清濁を併せ呑めない人というのは、その心が、要するに狭量であるからで、言い換えれば了見が狭いからなので・・・同時に、そういう人は、人の世の因縁というものの本当の尊さを、正しく認識していないからである。

深く考えなくともすぐ分かることと思うが、この広い世の中の、しかも何十億という数多い人の中で、自分の知る間柄になっている人の数というものは、まことに九牛(きゅうぎゅう)の一毛(いちもう)ただならず(註・多くの牛の中の一本の毛ほど珍しい)・・・いや大海の一滴にも等しい、実に少ないものである。

そして、その上、自分というものがこの世に生存している年限というものは、たとえ百歳まで生きられるとしても、無限に長い宇宙の生命に比較すれば、これまた夢一瞬の短さである。

従って、どんなに気の合った自分の好ましい人といえども、自分の望む程いつまでも仲よくして行くことは、絶対に不可能なことである。

要約すれば、遅かれ早かれ、自分も又は知り合う相手も、必ずやこの世を去ることになるがためである。

人の世の逃れられないさまざまな現実というものを慎重に考えると、この世でお互いに知り合う間柄になったということは、これは思うに誠におろそかにできない大切な事柄なのである。

即ち前に述べたように、この非常に数多い人の中から知り合いになったということは、哲学的に論じてもまた科学的に考察しても、到底人間の知識では解き明かすことの出来ない、因縁という不可思議な幽玄微妙(ゆうげんびみょう)な(註・複雑で計り知ることのできない奥深い)作用の為すところである。

そうであるにもかかわらず、この人智で解き明かすことのできない因縁という不可思議な作用によって結ばれて知り合う仲となった者を、自分の気に喰わぬとか、あるいは心に合致しないとか、彼にはこういう欠点があるとか、または同意し難い習癖があるとか等々の理由をつけて批判排斥して、せっかく結ばれた因縁を無にするというのは、むしろ極言すれば、天の摂理を冒瀆する者というべきである。

天の摂理を冒瀆(ぼうとく)する者には、また当然の結果が来る。天の摂理は絶対にして些(いささ)かの容赦もなく、その健康の上にか、又は運命の上に結果をもたらすのである。

ともあれこの厳しく絶対的なる宇宙法則を厳粛に考えるとき、かりにも宇宙真理の践行に努めるわれ等天風会員は、恒に人生の事情のすべてを超越して、心して清濁併せ呑むという因縁尊重の完全なる人生に生きることに勉めよう。

Be not the first to quarrel nor the last to make it up. (訳・ 諍(いさか)いにおいては人の先に立つべからず、また和解することに後れをとるべからず。)
Be patient toward all men. (訳・全ての人々に寛容であれ)

『天風哲人箴言註釈』昭和三十八年発行、「箴言十六」現代語表記・編集部編
 

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